Ｍｉｎｋの図書館♪（バックナンバーその１）
「あたしだけのＶｅｌｖｅｔ Ａｎｇｅｌ」（２０００年２月１１日ＵＰ）
※ちょっとだけ解説：
→このミニ小説は、第７話（２０００年３月号）のちょっと後のお話という設定です。では、ど〜〜ぞ☆
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あたし、２年４組の森山叶花。
誰にも言えないあたしだけの宝物のお話。聴いてくれる…？
それは、ある土曜の夜のことだった。
あたしは、真帆子と一緒に歌番組のスタジオ見学に来ていた。もともとあたしは、こんなチャラチャラした芸能番組なんて好きじゃないし、ましてスタジオ見学とかロケなんて行く趣味はない。じゃあ、なぜ来たのかって？ それは、Ｍｉｎｋがライバルの水原愛純と一緒にこの番組に出るからだった。
Ｍｉｎｋのセカンドシングルの「Ｖｅｌｖｅｔ Ａｎｇｅｌ」が発売早々いきなりのヒットチャート１位。さっすがあたしが作ったアイドルだね〜〜（えっへん☆）。当然Ｍｉｎｋは、いろんな番組に引っ張りダコ。ライバルの水原愛純はトップを奪われて相当頭にきてるに違いない。トロいＭｉｎｋがまた水原愛純に嫌がらせされないか心配で、あたしは鳥海先輩に頼んで、スタジオ見学と称してＭｉｎｋを見守ることにしたのだった。みんく、いや、Ｍｉｎｋってば、心配でどうもほっとけないのよね〜〜。
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜、イリヤ君よ！イリヤ君よ！素敵ぃ〜〜〜〜〜！！！」
あちゃ〜。真帆子ってば、ＪＡＧＵＮＮＡが出た途端、すっかりお目々がハートマークだ。今日はＭｉｎｋを見守りに来たってのに、わかってないよねえ。やっぱこの子はつれてくるべきじゃなかったかな〜？まあ、確かに、ＪＡＧＵＮＮＡは格好良いし、歌もすごくいいし、ステージも素晴らしいとあたしも思う（まあ、あたしが作ったＭｉｎｋにはかなわないけどね〜〜☆）。でも、みんくや真帆子みたいに狂ったように熱中するってのもなんだかよくわかんない。みんくなんか違う世界へ行っちゃってハタで見ているこっちはいっつもハラハラさせられる。やっぱりみんくはほっとけないのよね〜。
「ねえねえ、叶花。」
「なあに、真帆子？」
「さっき渡された番号札があるでしょあるでしょ？」
「ああ、これ？ 何だろうね？」
「この札つかってあとで抽選だか何かがあって、当たるとその場で今日の出演者のサインがもらえるらしぃよ。キャ〜〜〜！！イリヤ君のが欲しいの欲しいの〜〜〜☆」
「イリヤ君のサインなら、こないだもらったじゃん？そんなにもらってどうすんの？」
「何枚でも欲しいのぉ〜〜〜〜。欲しい欲しい欲しい欲しい〜〜〜〜☆」
…あちゃ〜。この子も段々みんくに似て「違う世界」へ行っちゃう傾向が出てきたなぁ。はしゃいでる真帆子は、実に始末におえない。ふぅ…。
「ねえねえ、叶花〜〜。あなたがもしイリヤ君のサイン当たったら、あたしに頂戴〜〜〜〜☆」
「じゃあ、今度おごる？」
「おごるおごるぅ！！！」
…しめしめ。もしも当たったら、何おごってもらおうかな〜♪
さて、ステージでは水原愛純が「Ｗｉｔｈ」を歌っている。
…へえ。素敵ぃ！ Ｍｉｎｋに負けたとは言え、ヒットチャート２位の実力はやっぱりすごい。歌も上手いし、ステージも洗練されてる。
「Ｌ・Ｏ・Ｖ・Ｅ、あずみ〜〜〜〜〜ん！！！」
をを？ 向こうの客席から愛純親衛隊が応援している。さすが人気は相変わらずすごいなあ。これで性格悪くなきゃ言う事ないんだけどね〜。
「さて、次は、いきなりヒットチャート第１位でノリにのってるこの人、Ｍｉｎｋちゃん！！！ 歌は“Ｖｅｌｖｅｔ Ａｎｇｅｌ”です！」
司会がそう叫んだ途端だった。
「うおぉ〜〜〜〜！！！Ｍｉｎｋちゃ〜〜〜〜〜〜ん！！！！」
会場中から唸るような大歓声が巻き起こった！ そして、ステージが暗くなったとき、客席にはいつのまにか無数の青白い光がともっていた。
「あ、これは“Ａｎｇｅｌ Ｒｉｎｇ”？」
あたしはすぐに気がついた。最初武闘館でやるはずだったコンサートチケットには、蛍光塗料が塗ってあったのだ。会場が縮小されても、Ｍｉｎｋの応援にかけつけた人達のチケットが会場中に光の輪を作って「Ａｎｇｅｌ
Ｒｉｎｇ」となったのだが、その時のチケットを、未だにファンが「お守り」として持っている…。まさにそれはあの時のＡｎｇｅｌ Ｒｉｎｇの再現だった。Ｍｉｎｋってば…、すごい！ やっぱりあたしが作ったアイドルだね…。
この曲のプロデューサーであるイリヤ君がステージに現れ、キーボード伴奏をつとめる。そしてやがて、暗いステージの端っこから、「Ｖｅｌｖｅｔ
Ａｎｇｅｌ」に扮したＭｉｎｋが歌いながら現れた。
「き、きれい…！！」
あたしは思わず胸がドキドキしてきてしまった。そこに立っているのは、いつもあたしとおしゃべりしているみんくでも、バードミュージックにいる時のＭｉｎｋでもない。まさに「Ｖｅｌｖｅｔ
Ａｎｇｅｌ」だった。その甘い声、きらめく姿に、あたしは思わず見とれてしまった。
「どわああああ！！！！愛してるよ、Ｍｉｎｋちゅわ〜〜〜〜ん！！！はっふ〜〜〜〜ん！！！」
なんだか「違う世界」へとイッちゃってるファンの人たちが、最前列で涙を流しながら叫んでいる。きっとあの人たちは、噂に聞く「Ｍｉｎｋファンクラブ」の濃厚な幹部の方々に違いない。すごいなあ、Ｍｉｎｋってば。こんなにファンに愛されて…。さすが、あたしの作ったアイドル…。
さて、ステージでは、お楽しみ抽選会が開かれていた。
「さあて、次は、ＪＡＧＵＮＮＡのサインです。では、ボーカルのイリヤ君、くじを引いてください！」
司会が言い、イリヤ君がくじを引きにかかった。
「きゃ〜〜〜〜、当たるかな当たるかな？ あたったら、あたしってば、どぉしよぉ〜〜〜〜〜〜？？？？」
もう、真帆子はあたしの手に負えない。他人のフリしたいなあ、もぉ。
「はい、７５番です」
すると、真帆子の隣にすわってた女の子が「あたしですぅ☆」と叫んで、ステージに駆け出して行った。
「や〜〜〜〜ん、もぉ、惜しい〜〜〜！！！ あと番号一つ違いだったのにぃ！ 神様のバカぁ〜〜〜〜！！！！」
真帆子が涙をだらだら流しながら悔しがっている。もお、いいかげんおとなしくせんかあ！？
やがて、抽選は、最後にＭｉｎｋの番になった。Ｍｉｎｋがくじを引く。
「じゃあ、引きますね。え〜〜〜と、７３番で〜〜〜す☆」
…え？７３番？？？？？
あたしは自分のくじを見た。よく見たら、あたしのくじは、７３番だった。
「え、え〜〜〜〜〜〜〜っ！？？？？あたしぃ〜〜〜〜〜〜〜？？？？」
思わずあたしは叫んでしまった。
「はい、おめでとうございますぅ！！さあ、ステージへどうぞ！！！」
司会の人がやってきて、あたしの腕をつかんで引っ張っていく。
「え、いや、あたしは、その…」
なんだかよくわからないうちに、あたしはステージへ引っ張りだされていた。ど、どうしよう…。テレビのステージになんて立ったことないよ〜。
あたしがドキマギしていると、Ｍｉｎｋがやってきて、耳元で囁いた。
「叶花ちゃん、大丈夫。恐くないからね」
…ドキッ！！！
あたしがあっけにとられている間に、Ｍｉｎｋはあたしの前に向き合って、あたしにマイクを向けた。
「こんばんは。Ｍｉｎｋですっ！ 今日は会場に来てくれてどうもありがとう。お名前は？」
「えっと、も、森山叶花です…」
「じゃあ、森山叶花ちゃんへ……っと！ これでよ〜し♪ 叶花ちゃんのお名前入りのＭｉｎｋのサインを、差し上げま〜〜〜す☆」
Ｍｉｎｋが満面の天使の微笑を浮かべて、あたしの前に近づく。あたしの心臓がものすごい音をたてて脈打っている。
「はい、叶花ちゃん、どうぞ☆」
Ｍｉｎｋがあたしにサインを差し出す。
「あ、ありがとうございます…。」
受け取ったとき、Ｍｉｎｋの手があたしの手に触れた。まるで天使のような手…。その瞬間、あたしにはＭｉｎｋの背中に、天使の羽が見えた。
「す、すごい。なんだか、心臓が止まっちゃいそう…」
もう、あたしの鼓動は、バクバク言って止まらなかった。え〜い、なんで静まらないのかしら…？ あたしってば、どうしちゃったの？ あ〜ん、心臓ってば、静まれぇ〜〜〜！！！
さて、帰りの夜道。
「叶花ってば。いっつも冷静だから、もっと堂々としてるかと思ったら、意外に意外さんだったのね〜〜〜？むふぅ☆」
ニヤニヤ真帆子はしきりにあたしを茶化す。あたしはぐっとこらえて黙って歩く。
「叶花みたいな脳みそ数字人間でも、ああいう反応するんだぁ〜〜〜〜。へぇ〜〜〜〜〜！！！！」
真帆子の茶化しに、あたしもいいかげん我慢できなかった。
「う、うるっさいわね〜〜〜！！！」
「うふっ、純情ぉ娘、かっのかちゃ〜〜〜ん♪」
「し、仕方ないでしょ〜〜〜〜？？？ だって、あんな客がたくさんいるステージなんて、上がったことないんだからさあ…」
「でも、ああいう反応って意外だったわね〜〜〜。叶花ってば、Ｍｉｎｋにサインもらったら、涙ボロボロで泣き出しちゃうんだもんね〜〜〜〜。」
…そう。あたしは、Ｍｉｎｋにサインをもらった途端、涙をボロボロ流して泣き出してしまったのだ。
「叶花って、あんなにアガり症だったのね。もぉ、かわいいっ☆」
「なにおぅ！？」
「強がってもダメよん。純情叶花ちゃんって、呼んであげるぅ」
「……む、むぅ〜〜〜。」
あたしが泣き出したのを、真帆子も、他の人たちも、あたしが緊張しまくってアガりまくった末に泣き出したのだと思ったようだ。
…でも、きっと違う。
あたしが泣いちゃったのは、アガったせいもあると思うけど、でも、きっと違う…。
その夜、あたしはなかなか寝つけなかった。
「はい、叶花ちゃん、どうぞ☆」
あたしにサインを差し出すＭｉｎｋの顔が、頭から焼きついて離れなかった。あのＭｉｎｋの手の感触が、あたしの手からなかなか消えなかった。
あたしの目から、また涙がこぼれおちた。
次の日、いつもの通学路。
「おっはよ、叶花！」
真帆子とであった。
「おはよ〜〜」
「おや、叶花ってば、寝不足？ またチャットで夜更かしでも？」
「ま、まあね…」
そんなことを話していると、いつものみんくの声がした。
「おっはよぉ〜〜〜。叶花ちゃん、真帆子ちゃん〜〜〜♪」
…どきっ！！！
そこにいるのは、確かにいつもみんくだった。
でも…。あ、あれ？ あれれ？
なんでこんなに心臓がドキドキするんだろう？
や、やだ、なんだかまた涙が出てきそう…。どうして？どうして？
「あ、あたし、忘れ物しちゃった。ちょっと戻るね…」
そういって、あたしは駆け足でその場を去った。途端に涙が目から溢れてきた。
「みんく…」
あたしは家に戻り部屋に駆け込むと、涙をぬぐった。机の上には、昨日もらったＭｉｎｋのサインがあった。
「森山叶花ちゃんへ☆」
そう書いてある筆跡は、確かにみんくのものだった。
「あ、いつものみんくの筆跡だ。」
あたしは、その筆跡を見た途端、急にドキドキが静まってきた。
「そうだよね。いつものみんくだよね…。あたし、何を勘違いしてたんだろう…？」
少し目をつぶって、ドキドキが静まったあたしは、学校へ駆け足で向かった。
昼休み、あたしと真帆子とみんくは、お昼を一緒に中庭で食べた。
「叶花ってば、昨日、アガりまくって、ボロボロに泣いてたもんね〜」
真帆子が相変わらずニヤニヤして茶化す。
「う、うっさいわね〜〜〜〜〜！！！」
あたしがたてつくと、みんくが間に入った。
「まあまあ、誰だって緊張するよ〜〜〜。あたしだって最初のコンサートとか、緊張しまくってたもん。叶花ちゃんがあがったのも無理はないよ〜〜〜。」
そう言って、あたしに笑いかけるみんく。
…ドキっ！！
あたしはまたちょっと心臓がドキドキしてきてしまった。
でも、みんく。あんたってば、すごいね。
いつもはこんなにポケポケなのに、ステージに立つと、あんなにダイヤモンドのように輝くアイドルなんだね。あたしには確かに、Ｍｉｎｋの背中に天使の羽がみえたよ！！ ダイヤモンドの輝きを持つ、天使の羽が…。
あたしの机の上には、サイン色紙が１枚飾ってある。そのサインは、Ｍｉｎｋのサイン色紙。でもね…。
「森山叶花ちゃんへ☆」
…って書いてある筆跡は、確かにあたしの友達みんくのもの。あたしの親友みんくがくれた、ダイヤモンドの贈り物。あたしのかけがえのない友達からの、あたしの命より大切な宝物…。
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えっと、えっと……。
夏コミ、冬コミに続いて、Ｗｅｂでもまた「問題作」でしたね。ご、ごめんなさい…(^-^;;
では、次回作は「Ｍｉｎｋのスタードッキリ☆マル秘報告〜イリヤ君の寝顔〜」です。お楽しみに〜♪（……え？）