Ｍｉｎｋの図書館♪（バックナンバーその３）
「１９９９．８．１. ｉｎ 横浜」（２０００年３月２４日ＵＰ）
こんにちは☆ あたし、森山叶花。
去年の夏のあたしの思い出、聴いてくれる…？
それは去年の１学期の終業式の日だった。
「ね〜ね〜、叶花ちゃん」
休み時間、あたしがパソコンをいじっていると、みんくがあたしに話しかけてきた。
「おお？ どうした、みんく？」
「サイン会行かない？」
「サイン会って、イリヤくんのサイン会？ あたしはキョーミなし」
「ちがうよ〜。漫画家さんのサイン会だよ〜。真帆子ちゃんも行くって言ってるよ」
みんくがお目々をキラキラさせながら誘う。こういう子どもっぽい無邪気さというか無防備さは、やっぱりほっとけない。
「う〜ん、漫画家さんねえ。誰の？」
「“怪盗セイントテール”や“夢幻伝説タカマガハラ”を描いてる立川恵先生だよ〜。叶花ちゃんも面白いって言ってたじゃない？」
立川先生かあ。１度会ってみたい漫画家さんだ。みんくに薦められてセイントテールを読んだけど、とても素敵な話だった。タカマガハラも印象深い作品だった。あたしはサイン会なんて本来キョーミはないんだけど、まあ、別にアイドルのサイン会じゃないし、たまにはいいかなあ？
「そっか。じゃあ、行ってみようかな？」
「じゃあ、決まりね。８月１日、横浜のＹ書店だよ〜〜〜。」
みんくはすっかりるんるん気分のようだ。でも、みんくはともかく、あの筋金入りのアイドルオタクの真帆子が、よく漫画家さんのサイン会に行く気になったものだ。
さて、夏休み。そしてあっと言う間にサイン会当日。あたしは待ち合わせ場所の駅に向かった。まだ朝の６時半。書店につくのは７時半頃だろう。駅につくと、真帆子がそこにいた。
「ねえ真帆子、こんなに朝早く行く必要がどこにあんの？」
「ふっ、叶花ってば、甘いわね。何と言っても立川先生のサイン会よ。整理券を無事ゲットするためには、今から並びに行かないと安心できないのよ。」
「ふ〜ん。さすがは修羅場をくぐり抜けているアイドルオタクの真帆子だね〜。」
「“追っかけ”ならまだしも、“オタク”とは失礼ね！ パソコンオタクのあんたに言われたくはないわっ！」
「えっへん。なんてったってあたしだもん。パソコンオタクといわれるのは名誉だわっ！」
そんな会話を交わしつつも、みんくはまだ来ない。もう７時をまわった。
「みんく、遅いね〜〜〜。」
「そうだね。でも、真帆子。バリバリのアイドルオタクのあんたが、漫画家のサイン会とは珍しいじゃん？」
「オタクじゃないっての！ …まあ、立川先生の漫画、結構気に入って読んでたし。それに、あのみんくのキラキラお目々で誘われたら、断れる？」
「…う〜ん、断れないかも？（苦笑）」
そのサイン会を一番楽しみにしている当の本人ことみんくが来ない。
「みんくってば、まだ居眠りぶっこいてるんじゃないかなあ？」
あたしは、携帯でみんくの家に電話して見た。
「はい、白石ですが。」
みんくのママが電話に出た。
「おはようございます。あたし、森山です。みんくさんいらっしゃいます？」
「まだ寝てるのよ。起こしてきますね。」
…あちゃ〜〜〜。みんくってば、やっぱりまだおねむだったのか…。やがて、みんくが寝ぼけた声で電話に出た。
「おはよ〜〜〜〜〜〜、叶花ちゃん。日曜なのに、どうしたのぉ〜？」
「“どうしたの？”ぢゃないよ〜！ あんたから誘ったんでしょ？」
「ふぇ？」
「“ふぇ？”じゃないって。今日はサイン会じゃん。待ち合わせたのに、忘れたの？」
「……………………………………………？？？？？？」
それから数秒後、あわててみんくがバタバタする物音が電話の向こうから聞こえてきた。はぁ…。これだからほっとけないんだよね〜。
やっとこさ電車に乗り込んだ時には、８時をすぎていた。
「チコクチコクチコクチコク………∞」
みんくはべそをかきながら「違う世界」へイッちゃっていた。
「だ、大丈夫。なんとかなるって」
真帆子がなだめすかしている。
「サイン、もらえなかったらどぉしよ〜〜？？？」
「まずは、会場に行かないと…。ね？」
いつもと同じ速度のはずなのに、電車のスピードがこれほどのろく感じたことはなかった。時間は刻一刻と過ぎて行く。
会場近くのＫ駅に無事ついた時には、９時を過ぎていた。
「会場の書店、どっちかなあ？」
しばらく迷いながら探していると、やがて目の前に、長蛇の列が見えた。
「ええ？？？ こ、こんなに人が…？？？？」
それはすごい列だった。書店のビルの周囲を、たくさんの人がぐるりと取り巻いているのだ。チビッ子やその父兄の人、小中高生、そして、明らかに２０超していると思われるファンの方々など。
「ど〜しよ〜〜〜？？？ こんなに人が多かったら、サイン、もらえないかも〜？」
みんくがべそをかきだす。
「とにかく、並んでみなきゃわかんないよ」
あたしと真帆子はみんくをなだめて、とにかく列に並んだ。真夏日のせいか大変暑く、じっと立っているだけでも汗がダラダラと流れてくる。これは大変な１日になりそうだった。じっと１時間以上待って、１０時１０分ころを回ったとき、列がやっと動き出した。建物をほぼ１周して、ようやく冷房の効いた涼しい建物の中に入れた。階段を何階も上った先に、漫画売り場があり、整理券の配布を行っていた。どうやら、あたしたちの分は残っていたようで、無事に整理券をゲットすることができた。
「よかったぁ〜〜〜。サイン貰えなかったらどうしようかなあって思ったよ〜〜〜。はやく立川先生に会いたい〜〜〜〜〜♪」
みんくは、もうすっかりるんるん気分のようだ。あたしもなんだか、ワクワクしてきてしまった。
「サインは１時からだね〜。どっかでお昼でも食べようよ」
整理券さえ入手できればこっちのもの。あたしたちは、ひとまず会場の書店を後にした。
「きゃ〜〜〜〜、またチコクぅ〜〜〜〜〜」
「まったく、みんくがいつまでものんびり食べてるからだよぉ〜〜〜」
あたしたちは、１時過ぎにやっと会場へ戻ってきた。お昼をのんびり食べていたら、時間の読みを間違えてしまったのだ。
会場についてみると、再び建物の周囲には長蛇の列が…！！ ざっと見た所、２００〜３００人はいそうな気配だった。あたしたちの並んだ場所は、その長蛇の列のほとんど最後尾の方だった。
「暑い〜〜〜〜〜〜」
実際炎天下で、かなりの猛暑だった。列はなかなか短くならない。朝も早かったし、はっきり言ってフラフラだった。ここからは、ひたすら辛抱の時間だった。列が進んでは止まり、なかなか進まないという状態がしばらく続いた。
２時近くになって、ようやく店内に列が入った。店内は涼しく、辛さは減ったが、相変わらず列は階段の上方まで続いているのだ。じれったさだけが続く。
列は階段をやがて少しづつ上がって行った。２階、３階、４階、５階…、そして…！！！
「あ、あれは立川先生だよ！！」
みんくがうれしそうに声をあげる。６階の階段の踊り場のような場所に机があり、そこに、紺色のスーツを着こなした女性が座って、サインをしていた。
「こ、この方が立川先生・・・・？？？？ き、綺麗…！！！」
あたしは、先生を見た瞬間、「ドキッ！！！」とした。漫画の中では、ややギャグタッチな自画像を描いておられる先生だったが、実際の先生は、とても美人な方だったのだ！！！
「きゃ〜〜〜、本物だよ、みんく！ 素敵よねぇ〜〜〜」
「そうだね。来て良かったね。真帆子ちゃん！」
真帆子とみんくはキャーキャーはしゃいでいる。しかしあたしはそれどころじゃなかった。先生を観た瞬間から、あたしの心臓がバクバクと異常な速さで動き出していた。
「あ、あたしの心臓、どうしちゃったんだろう？？？ え〜い、鼓動よ、止まれ！！ いや、止まっちゃだめだあ。ど、どうしよう・・・・？？？？」
あたしがどきまぎしている間に、みんくと真帆子はさっさとサインを貰ってしまったようで、脇でキャーキャー言っている。そして、あたしの番になった…。
「こ、この人が、立川恵先生！！！」
あたしは先生の真正面についに立った。感激のせいか、それとも緊張のせいか、あたしの心臓はバクバク言って、壊れてしまいそうになっていた。ど、どうしよう…。手も震えてるし、足もガクガク…。
あたしが途方に暮れていたとき、立川先生があたしの方を見上げ、そして、ちょっとニコッとした。
「か、可愛い・・・！！！」
先生みたいな大人の女性に対して「可愛い」などと形容するのは、もしかしたら失礼なのかもしれない。でも、その瞬間、あたしは思った。先生の笑顔が「可愛い」って。
そして、その先生の笑顔を見た瞬間、あたしの心の中が、なんだかほんわりポカポカとあったかい気分になっていった。とっても嬉しい気持ちになった。
「せ、先生、あのっ……！！！！」
あたしは嬉しさのあまり、少し声が上ずっていた。
「あたし、セイントテールの頃から、先生の漫画が大好きです！！！」
はじめて「怪盗セイントテール」を読んで以来の４年越しの想いを、あたしは告白した。
「タカマガハラも面白かったです。いつも素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございますっ！！！」
すると、立川先生は、にっこりと微笑み、
「はい！ ありがとうございます♪」
と、答えてくれた。先生の生の声。それを聞いた瞬間、感極まったあたしの眼にはうっすらと涙が浮かんだ。
「今度の新連載も楽しみにしています。どうか夢いっぱいの作品を描いてくださいっ！！」
あたしは、せいいっぱいの笑顔を作って、先生に向かって叫ぶように言った。
こうして、つかの間の夢のような時間は、あっというまに過ぎていった…。
「へえ。脳みそ数字でできてるあんたでも、ああいう素直な反応ってするんだねえ」
帰りの道中、真帆子があたしをからかう。
「なにおう！？」
「立川先生、素敵だったもんね〜。さすがの叶花も、ちょっと涙ぐんでたでしょ？ あたしはわかったぞ」
「うぅ…」
しまった…。真帆子には観られてしまっていたようだ。くぅ！
「立川先生、素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵…∞」
みんくも感激のあまり、「違う世界」へイってしまっているようだった。
「…でも、本当に素敵だったな…。先生の笑顔があんなに素敵だから、先生がとってもあったかいから、先生の漫画のヒロインたちの笑顔はあんなに輝いているんだなあ…。」
あたしは、なぜ立川先生の漫画に惹かれたのか、その理由がハッキリとわかった。ヒロインたちの素敵な笑顔は、実は先生自身のあったかい笑顔そのものだったのだ…。
さて…。
あの思い出の日から約８ヶ月が経った。春休み、あたしたちは今三重県四日市市のＨ書店にいる。
「また、あの先生の笑顔に会える…！！」
１９９９年８月１日の感動。その感動が、もうすぐまたやってこようとしていた。
時は２０００年３月２６日。
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えっと、叶花ちゃんの姿を借りて、昨年の８月１日に私が体験した立川先生のサイン会の体験談をアップしてみました。叶花ちゃんが立川先生に対面する時の描写は、私の体験した感覚にほぼ沿ってます。私の受けた感激が、少しでも皆様にお伝えできればいいな〜って思います。そして、その感動が再びやって来ようとしているんです。３月２６日のサイン会です。とても楽しみです。今回のサイン会の参加記念として、この作品をアップしてみました♪