Ｍｉｎｋの図書館♪（バックナンバーその１０）

トップページに戻る

「すぃーと・ぽてと」（２０００年１２月１６日ＵＰ）


「んぐんぐんぐっ…。」
みんくは美味しそうに、さっき屋台のおじさんから買った焼き芋を頬張っていた。
「はあ、みんくってば、幸せそうだねえ…」
満面の笑みを浮かべて食べるみんくを、叶花はあきれたように見ていた。それには構わず、みんくは、どんどん焼き芋を口にしていく。
「ちょっとちょっと、みんくってば…」
「なあに？　真帆子ちゃん？」
「食べ過ぎじゃないのお？　これで４つ目だよ？」
あきれたようにみんくを真帆子はたしなめた。
「だってえ。美味しいんだもん♪」
「そんなに食べ過ぎるとねえ…」
「だいじょおぶだよ〜。このあと食べ過ぎなければ太ったりしないもん♪」
みんくは無邪気に食べつづける。真帆子はあきれてしまった。
「そうじゃなくってさ。焼き芋をそんなに食べたら、あんた、どうなるかわかってるの？」
「え？」
「“え？”じゃないわよっ☆　そんなに焼き芋食べたら、おならが止まらなくなるわよ…」
「おなら…？」
みんくは、ちょっと驚いたように目をパチパチした。
「そ、そういえば、そうだったっけ…？」
考え込むように、みんくは首をかしげた。
「あちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜、もう、この子は、これだからほっとけないのよね〜〜〜〜〜…」
叶花も真帆子も、だめだこりゃ、というふうにあきれかえった。

「おお？　こいつは美味そうだなあ。オレに一つ」
突然、モトハルがやってきて、真帆子の持ってる包みから一つ焼き芋を取ってかじりついた。
「あ〜〜〜〜〜〜〜！！！！？？？？？　モッくんってば、あたしの焼き芋取ったあ〜〜〜〜〜！！！！！」
真帆子は、怒ってモトハルをポカポカ叩いた。
「なんだよ、いいじゃん？　それに、モッくんはやめろ」
「だめ〜〜〜〜！！！！　今夜レンジでチンして食べようと思ってたのにぃ〜〜〜〜〜！！！！！」
「ケチケチするなよ。ん？　これ、本当に美味いな…」
騒ぐ真帆子に構わず、モトハルは焼き芋を美味しそうに頬張る。
「おや、森山さん、白石さん、こんにちは。久しぶりだね〜」
モトハルは、ノーテンキに二人にあいさつする。
「こんにちは、鳥海先輩」
「あ、あの、こ、こんにちは…」
叶花はハツラツと挨拶するが、みんくはモトハルの前ではアガってしまって、消え入るような声でオドオドと挨拶しかできなかった。
「ん？　白石さん。元気無いんじゃないの？」
モトハルはちょっと心配そうに、みんくの顔を覗き込む。モトハルに見つめられて、みんくはますます顔が真っ赤になった。
「あ、その、ええと…、だ、大丈夫です…」
みんくはますます声が小さくなった。
「中学生はもっと元気じゃなくちゃな！！　よし、元気のでるおまじないだ！！」
モトハルは、例によって、みんくの背中を「ポンッ」と叩いた。
（………！！！！！！！！？？？？？？？）
モトハルに背中を叩かれた瞬間、みんくにとんでもない衝撃が走った。みんくの顔が思いっきり硬直し、血の毛が引いた。
「ん？　白石さん？　本当になんだか顔色が悪くないか？？？　真っ青だよ？？？？」
「あ、その…。大丈夫ですから…。あはは…」
みんくは作り笑いをしたが、実はみんくには大変なことが起こっていた。
（や、やだっ…。今先輩に背中を叩かれたショックで、おならがしたくなってきちゃった…。）
みんくの顔に油汗が浮かぶ。どんどんとお腹が苦しくなっていく。
（ああん…。このままじゃ…。先輩の前で、で、出ちゃうよ…）
傍目にも、みんくの顔色がどんどん青ざめていくのがわかった。
（あ〜〜〜〜ん、こんなことなら、焼き芋あんなに食べなきゃよかった〜〜〜〜〜。先輩、早くどこかに行ってぇ〜〜〜〜〜）
みんくは今にも泣きそうな顔になった。そんなみんくの様子に、モトハルはますます心配になった。
「白石さん、このままほっておくわけにはいかないな。よし、オレが家まで送り届けてやるよ」
モトハルは、真剣な顔で言った。
（そ、そんなあ…。先輩の前でおならが出ちゃうよぉ〜〜〜〜）
そうしている間にも、みんくのお腹はどんどん限界に達していた。
みんくは、作り笑いをしてさらに言った。
「ほ、本当に大丈夫ですから…。だから、あとは、一人で家に帰りますぅ…」
作り笑いと泣きそうな表情とが入り混じって、みんくの表情は傍から見てますます心配な状態になった。
「そうだよ、みんく。鳥海先輩に送っていってもらえばいいじゃん」
叶花が口出しをする。
（うふふ、こうやってみんくと鳥海先輩を二人っきりにしてあげるなんて、さっすがあたし。名づけて“叶花のらぶらぶ大作戦”〜〜〜〜☆）
叶花のそんな隠れた思惑も、みんくにとってはハタ迷惑でしかなかった。
（か、叶花ちゃんってば、余計なこと言わないでよぉ〜〜〜〜）
みんくは、逃げるように後ずさった。
「ほ、本当に大丈夫ですから…」
みんくがじりじりと後ずさったとき、みんくのかかとが道路の縁石にひっかかった。
「あっ…」
みんくはつまづいて、真後ろによろけた。
「白石さん、危ないっ！！！」
とっさにモトハルは駆け寄り、倒れるみんくの身体を抱きとめる体制に入った。
「あ、先輩…」
自分を助けようと駆け寄るモトハルの姿に、みんくは一瞬ときめいた。みんくの身体が、モトハルの腕の中に倒れ込む。
「ドサッ」
その倒れ込んだ瞬間だった……。

…………ぷぅ〜〜〜〜〜〜！！！！…………

一瞬、その場が凍りついた。倒れ込んだ衝撃で、ついにみんくのお腹は我慢しきれずに、出てしまったのだった。

（………で、で、出ちゃった………？？？？）
みんくは、愛しいモトハルの前でやってしまったショックで、アタマが真っ白になってしまった。
（………ど、どうしよう………。あたし、先輩の前で、や、やっちゃった………？）
みんくはもう、絶望のどん底にいた。
（……あ、あたし……き、嫌われちゃうの………？？？）
みんくの目に涙が浮かぶ。
（嫌われちゃうよね…。こ、こんな、人前でおならしちゃう下品なおんなのこなんて、先輩、絶対嫌いだよね…。どうしよう…先輩に嫌われちゃうよ…どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう…∞）
みんくはアタマがパニックになった。涙ぐんだ眼で、おそるおそるモトハルの顔を見た。
眼と眼が合ったその瞬間だった。
「ぷっ…。わは、わははははははははは…！！！！」
モトハルは突然、お腹を抱えて笑い出した。
（せ、先輩…？？？）
みんくは、あまりの出来事に、あっけにとられてしまった。
「ひぃ〜〜〜〜、お、可笑しい〜〜〜〜！！！！！　白石さんってば、おならがぷぅ〜〜〜だなんて〜〜〜〜！！！！　わはははははは！！！！！」
お腹をかかげて笑い転げるモトハル。あまりのハズカシさに、ついにみんくの両目から涙があふれ出た。
「…ひどい…。せ、先輩の、バカぁ〜〜〜〜〜〜〜！！！！！！！！！」
大声で泣きながら、みんくは逃げるように走り去ってしまった。
「…あれ？　白石さん…？　どうしたのかな…？」
モトハルは、みんくが突然泣いて去ってしまったので、とまどってしまった。
「なあ、真帆子…。白石さん、どうしちゃったの？」
よくわかんないと言った表情で真帆子に尋ねるモトハル。
「どうしちゃったのじゃないでしょお？　モッくんの大馬鹿っ！！！！」
真帆子は、怒りにまかせて、モトハルに掴みかかった。
「大馬鹿…って、お、オレが一体何をしたって…？」
「そんなこともわかんないから大馬鹿なんでしょっ！！？？？　モッくんの大馬鹿トントンチキデリカシーゼロ乙女の敵っ！！！！」
「そ、そこまで言うか？？？？　だいたいオレが何を…？」
ケンカする真帆子とモッくんを見ながら、あきれたように叶花がつぶやいた。
「鳥海先輩…。今日の先輩って、サイテーですよ…」
「森山さんまで…。一体オレが何をしたっていうんだい？」
「みんく、すごく傷ついたと思うよ…」
「傷ついた…？」
「男の人の前でおならしちゃっただけでさえとてもハズカシイのに、まして笑われちゃったりしたら、みんくってば、もう恥ずかしすぎて二度と表を歩けないんじゃないかなあ？」
「笑ったって、いや、あれは、白石さんのおならがあまりにも可愛かったから、つい可笑しくなって…」
「理由はどうあれ、みんくってば、馬鹿にされて辱められたっていうショックしか受けてないと思うよ…。あ〜あ、みんくってば、可哀想に…」
「そうよっ！！！！　モッくんってば、みんくをとことん傷つけたのよっ！！！　このままみんくが立ち直れなかったら、ど〜すんのよっ！！！？？？？」
「女心がわかってないよね〜〜〜〜。超ドンカンだよね〜〜〜〜。あ〜〜〜あ、つくづく鳥海先輩って、乙女の敵だよね〜〜〜〜」
叶花と真帆子から非難をゴーゴー浴びて、モトハルはどうしたらいいかわからなかった。
「そ、そんなこと言ったってさあ…。お、オレはどうしたらいいんだよぉ〜〜〜〜〜？？？？？」

さて、みんくは、モトハルにおならを笑われたショックで、自分の部屋のベッドでずっと泣きじゃくっていた。
「みんくちゃん、みんくちゃん、そんなに泣かないで…」
オムがみんくを心配してしきりに話かけるが、みんくはそれに答えずにただただ泣いてばかりだった。
「ひどい…。先輩ったら、ひどいよ…。あんなに笑わなくたって…」
恥ずかしさで、みんくは、もうこのまま死んじゃいたいくらいだった。
「嫌われちゃったよね…。あんなに笑われちゃったんだもん…。下品なおんなのこだって思われちゃったよね…。もう、先輩に合わせる顔が無いよ…。それに、“先輩の馬鹿”だなんて言っちゃったし…」
突っ伏して泣いてばかりのみんくに、オムが焦ったように話しかける。
「みんくちゃん、そろそろ変身しないと…。お仕事だよっ☆」
「え…？…あ、いけない…。お仕事の時間だっけ…。」
携帯電話を取り出して変身しようとしたが、みんくは、掲げた携帯を下に下ろしてしまった。
「みんくちゃん、どうしたの？　早く変身しないと…？」
「今日は、お仕事、行きたくないよ…」
「どうして？」
「だって、お仕事行ったら、また先輩と会わなきゃならないもん…。あたし、もう嫌われちゃったもん………。先輩と会いたくないよ…」
みんくはそうつぶやくと、また眼から涙をぽろぽろこぼした。
「で、でもさ。Ｍｉｎｋちゃんとしては嫌われていないわけだしさあ。Ｍｉｎｋちゃんとしてうまくポイント稼いでおけば、もしかしたら、みんくちゃんとしても仲なおりできるかもしれないよお？」
オムが必死にフォローすると、それを聞いたみんくは、急に眼を輝かせて立ち上がった。
「そ、そうよね、オムくん！！！　お仕事頑張れば、きっと先輩と仲なおりできるよねっ！！！」
やけに張りきるみんくに、オムはちょっとあきれてしまった。
「やれやれ、単純だなあ…」
みんくは携帯を取り出した。
「ＷＡＮＮＡ−ＢＥ　ＳＴＡＮＤ　ＢＹっ、起動！！！」
みんくの身体が光りに包まれた瞬間、みんくはＭｉｎｋに変身していた。
「じゃあ、オムくん、今日も張りきっていこうねっ☆」

Ｍｉｎｋはスタジオにやってきた。
「こんにちは〜〜〜」
控え室に入ると、いきなりＭｉｎｋはモトハルと出会ってしまった。
「よっ、Ｍｉｎｋ。ちょっと遅いぞ」
いきなり出会ってしまい、Ｍｉｎｋはどぎまぎしていた。
「せ、先輩…」
「ほらほら、本番はすぐだぞ。今日も張りきっていこう！！！」
モトハルはそう言うと、いつものようにＭｉｎｋの背中を「ポンっ」と叩いた。
（………うううっっっ？？？？………）
Ｍｉｎｋのお腹に、またしても衝撃が走った。
（や、やだっ…。またおならがしたくなっちゃった…）
モトハルの「ポンっ」のおかげで、またＭｉｎｋはおならがしたくなってしまったのだ。
（…い、いまトイレにいってしちゃえば、きっと大丈夫だよね…）
Ｍｉｎｋはトイレに行こうとした。
「おい、Ｍｉｎｋ。スタジオはこっちじゃないぞ。しょうがないなあ…」
モトハルはＭｉｎｋの手を引っ張って、スタジオの方へ向かった。
（せ、先輩が、あたしの手を握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って握って……∞）
思わずときめいて違う世界へイってしまったＭｉｎｋだった。
（…って、ときめいている場合じゃないのぉ〜〜〜〜…。と、トイレに行かせてぇ〜〜〜〜〜〜…！！！）

お腹が張ったまま、Ｍｉｎｋはスタジオ収録に入ってしまった。この日は歌番組の収録であった。
「やあ、Ｍｉｎｋちゃん。今日も頑張ろうね。」
イリヤが白い歯をキラっと光らせて、Ｍｉｎｋに挨拶した。
（イリヤくん、今日もカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイカッコイイ…∞）
いつものごとく、Ｍｉｎｋはイリヤにメロメロになってしまった。
だが、そうときめいている間にも、Ｍｉｎｋのお腹はどんどん張ってきてしまった。
（はうっ！！　ま、また……？？？）
そうしている間にも、本番収録が始まろうとしていた。
（こ、こうなったら、死ぬ気で頑張るしかないわ…）
Ｍｉｎｋが必死の形相でこらえているので、イリヤはいぶかしげにＭｉｎｋを眺めた。
「おや、どうしたの？　Ｍｉｎｋちゃん？　元気がないみたいだけど…？」
「え、その、いや、なんでもないですぅ〜…」
Ｍｉｎｋは作り笑いをイリヤに向けた。
「ほらほら、Ｍｉｎｋ、そろそろ本番だゾ」
モトハルが、もたもたしているＭｉｎｋにしかめた顔を向ける。Ｍｉｎｋはとっさに、イリヤの影に隠れてしまった。
「おや？　どうしたの？　マネージャー君とケンカでもしたのかい？」
「いえ…。そ、そんなことないですよぉ〜〜〜」
そんなＭｉｎｋの様子に、首をかしげるイリヤだった。

「さて、次は、Ｍｉｎｋちゃんの登場です。」
Ｍｉｎｋが呼ばれて、司会者席にやってきた。もう、Ｍｉｎｋは既に限界に達していた。
「Ｍｉｎｋちゃん、こんにちは〜」
「あ、はい…。こ、こんにちは…」
真っ青に青ざめながら、どうにか作り笑いでＭｉｎｋは挨拶した。
「おや、Ｍｉｎｋちゃん？　今日は、ちょっと緊張しているのかな？」
司会のタレントが、Ｍｉｎｋのそんな様子をフォローするように言う。
（どうしたんだ、Ｍｉｎｋ？　いつものおまえらしくないじゃないか…？）
スタジオの影から見ているモトハルも、Ｍｉｎｋの様子がおかしいことに気付いた。
「あ…、はい…。なぜか今日は緊張しちゃって…」
Ｍｉｎｋはどうにか答えるのがやっとだった。
「もしかして、今日はイリヤくんが来ているけど、そのせいかな〜？」
司会がにやにやしながら突っ込む。
「え、ああ、もしかしたら、そうかもしれませんね…。あはは…」
必死に話しを合わせるＭｉｎｋ。そこへ、ステージのわきからイリヤが登場した。
「こんばんは、イリヤです。」
カメラ目線で挨拶しながら、イリヤはＭｉｎｋの傍に寄った。
「さあ、Ｍｉｎｋちゃん。大丈夫、緊張することは無いから、元気よく歌おう！！」
はつらつとした笑顔を見せたイリヤは、とっさにＭｉｎｋの手をとると、Ｍｉｎｋを立たせようとしたのか、ぐいっと引っ張った。
（あ…、そ、そんなに急に引っ張られたら……）

………ぷううううぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜！！！！！！！………

場がその瞬間凍りついた。手を引かれて身体が動いたショックで、ついにＭｉｎｋのお腹は我慢しきれずに、出てしまったのだ…。

（ど、どうしよう…。よりによって、テレビ収録で…。しかもイリヤくんも、そして先輩も見ている前で、ど、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……∞）
あまりの事態に、Ｍｉｎｋはもうどうしたら良いのかわからず、身動きができなかった。
「み、Ｍｉｎｋ…。お、おまえ………」
モトハルの、焦りまくったつぶやきが口から漏れる。Ｍｉｎｋにもそれが聞こえてしまった。
（せ、先輩の前で、またおならしちゃったよぉ〜〜〜…。き、嫌われちゃうよぉ〜〜〜〜〜…………）
Ｍｉｎｋの眼に涙が浮かびかけた、そのときだった。
「あ、す、すみません。つい、やっちゃいましたあ。」
イリヤが、アタマを掻きながら、ペロっと舌を出した。
（え…？？？）
Ｍｉｎｋは、わけがわからずポカンとしていた。もちろん、その場にいる人たち全員があっけにとられたことは言うまでもない。イリヤは突然Ｍｉｎｋの前でペコリとアタマを下げた。
「ごめん、Ｍｉｎｋちゃん。君の前でおならをするなんて、俺はなんって失礼な奴なんだ…」
「え？え？」
自分がおならをしたことがわかっているだけに、Ｍｉｎｋには状況が飲み込めなかった。
「…というわけで、すみません、ＮＧ大賞のネタになっちゃいましたねえ。」
そう言っておどけるイリヤの姿に、辺りの人は一斉にドッと笑い出した。
「わはははは！！！　まさかイリヤくんがおならとはねえ」
「ちょっと、イリヤくん、本気でＮＧ大賞狙うつもりぃ？」
周囲に和やかな空気が戻っていった。
「なんだ、イリヤの方かよ…？」
モトハルも、イリヤの仕業だと思ったようだった。そんな状況の中、一人状況が飲み込めずに戸惑っていたのは、Ｍｉｎｋだけだった。

収録後、Ｍｉｎｋはイリヤの控え室に行った。
「あの…。イリヤくん…。」
Ｍｉｎｋが声をかけると、イリヤはそっけない顔を向けた。
「やあ、Ｍｉｎｋちゃん」
「あの…。さっきは……」
Ｍｉｎｋが言いかけると、突然イリヤは厳しい声で言った。
「気をつけろ！」
その声に、Ｍｉｎｋはビクっとなった。
「オレたちはプロの芸能人なんだ。本番中におならをするなんて、プロ失格だ。」
イリヤは厳しい眼でＭｉｎｋを一喝した。
「ご、ごめんなさい……。イリヤくんに恥をかかせてしまうなんて…」
Ｍｉｎｋが涙をぽろぽろ流したとき、イリヤはＭｉｎｋをやさしく抱きしめた。
「ごめんね。怒鳴るつもりはなかった…。でも、さっきのことで、Ｍｉｎｋちゃんのイメージダウンに繋がったら一体どうするつもりだったんだい…？」
イリヤは、優しい声でＭｉｎｋに語りかけた。
「イリヤくん…。でも、あなたに迷惑が…」
「オレのことなんて気にする必要はないよ。あの時はオレがいたからフォローできたけど、でも、オレがいなかったら、どうするつもりだったんだい？　それだけが心配だった。だから、ちょっと厳しく言わせてもらったよ。」
「ごめんなさい、イリヤくん、本当にごめんなさい…」
Ｍｉｎｋは涙を流しながら、イリヤに謝るのだった。
「おんなのこは特にイメージが大切だからね。Ｍｉｎｋちゃん、もっと自分を大切にしなきゃダメだよ。」
そう言って座ると、イリヤはさらに尋ねた。
「そういえば、Ｍｉｎｋちゃん、今日は元気がなかったね。一体どうしたの？」
「いえ、その、たいしたことじゃないんですけど、ちょっと、その、やっぱり人前でおならしちゃって…」
Ｍｉｎｋは恥ずかしそうに言う。
「おならを…？」
「やきいも食べ過ぎちゃったんです…。それで、ついおならしちゃって、それで思いっきり笑われちゃって…。それで、その人に馬鹿とか言ってしまって…」
Ｍｉｎｋは悲しそうな表情で言った。
（ふ〜〜〜ん…）
イリヤは、ピンと来たようにうなずいた。
「ふふふ。きっとその人は、Ｍｉｎｋちゃんのおならが可愛らしかったから笑ったんじゃないのかなあ？」
「えええっ？？？」
「だって、さっきのＭｉｎｋちゃんのおなら、とっても可愛かったよ☆」
そう言ってにっこりするイリヤの言葉に、Ｍｉｎｋは思わず真っ赤になった。
「や、やだっ、イリヤくんったら、もぉ〜〜〜〜！！！」
「ご、ごめんごめん、からかったわけじゃないんだよ。可愛かったのは、本当だよ。」
「もお、恥ずかしいよぉ〜〜〜」
「でも、きっとその人も、馬鹿にしてＭｉｎｋちゃんのおならを笑ったわけじゃないんじゃないかなあ？」
「そ、そうかなあ…？」
「ふふ…。仲なおりしちゃいなよ。きっと笑っちゃったこと、気にしてると思うよ。」
「そうか…。そうかもね。」
Ｍｉｎｋはうなずくと、笑顔を浮かべて言った。
「あたし、仲なおりするっ☆　イリヤくん、どうもありがとう！！！」
そう言うと、Ｍｉｎｋは、笑顔で控え室を飛び出した。
「やっぱりＭｉｎｋちゃんには笑顔が一番だな…」
イリヤは、そう言って、うつむきながら、髪をかきあげるとつぶやいた。
「ついつい君のフォローをしちゃうとはね…。“敵”に塩を贈ってしまったかなあ…？　まったく、君ってやつは、デリカシーゼロだねえ…。そうだろう？　マネージャー君…」

元の姿に戻ると、みんくは、バードミュージックの方へ向かった。
「あたしったら、先輩に“馬鹿”だなって叫んじゃって…。先輩に謝らなきゃ…」
道を走っていると、そこへ、一台のバイクがやってきて止まった。
「あ…？」
案の定、それはモトハルだった。
「せ、先輩、あの…」
みんくがどぎまぎしながら言いかけたとき、モトハルは頭を下げた。
「白石さん、さっきはごめん」
「せ、先輩…？」
「オレ、考えが足りなかった…。白石さんを馬鹿にするつもりはなかったんだ…。ただ、白石さんのおならが、あまりにも可愛くて、つい笑っちゃって…。ごめん。傷ついたよな…」
モトハルが悲しそうに謝るので、みんくは胸がキュンとなった。
「あの、そんなに気にしないでください…。あたし、怒ってませんから…。あたしの方こそ、先輩に“馬鹿”だなんて言っちゃって、ごめんなさい…」
みんくもどぎまぎしながら謝る。
「ねえ、白石さん、お詫びになにかごちそうするよ…」
モトハルが頭を掻きながら言う。
「何がいい？」
「じゃあ…。あの…」
みんくは、モトハルの耳に顔を近づけてささやく。
「えええ？　や、焼き芋？？？」
「だって、先輩と一緒に食べたいんです…」
「で、でも、そ、それって…」
「そのかわり、あたしがおならしても、絶対に笑わないでくださいねっ☆」
みんくがペロンと舌を出す。「まいったな」といった表情で、モトハルは戸惑うのだった。

その頃、叶花は自宅でパソコンをいじっていた。
「う〜〜〜ん、だんだんデジカメの解像度も進歩してきたよね〜〜〜」
叶花が見ている写真は、焼き芋を頬張るみんくの写真だった。
「この焼き芋頬張っているみんくってば、ほんと、無邪気で可愛いんだよね〜〜〜〜〜〜」
叶花は、トロ〜〜〜んとした眼で、パソコンに表示された写真を眺めていた。
「みんくのさっきのおなら、可愛かったな…。またそのうち、焼き芋食べに誘っちゃおうかなあ…？」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

どうもですぅ〜〜〜♪
前作から２ヶ月くらい経ってしまいましたが、久しぶりに小説を執筆してみました。いかがでしたか？

…って、今回の作品…、またしても大問題作かもしれません（那智滝汗）。なんと、こともあろうに、みんくちゃんに「おなら」をさせてしまいましたっ！！！（ちゅど〜〜〜〜〜ん！！！）。しかも、さらにＭｉｎｋちゃんにまで…！！！！　その上、例によって叶花ちゃんは「アレ」な感じだし…（爆）。でも、最後にはモッくんとみんくちゃんをラブラブにさせてしまうという結末は、相変わらずワンパターンですねえ…。でも、みんくちゃんの恋はやっぱり叶えてあげたいから、やっぱり最後は、モッくんとの甘い時間をみんくちゃんに味わってもらってます。

今回の小説、イリヤくんはハッキリ言って超マトモです。渋いです。カッコイイです。前回のイリヤくんとはまたしてもガラリと雰囲気違ってます。そのあたりもお楽しみくださいませ。

トップページへ戻る