Ｍｉｎｋの図書館♪（バックナンバーその１３）
「よかった音頭」（２００２年１月１３日ＵＰ）
…素直になれなくて…
…本当の自分を出せなくて…
…あなたの前では真実の自分でいたいのに…
いつもの朝、あたしはいつもの通学路を向かう。
「叶花、おっはよ☆」
あたしに話しかける真帆子の声。あたしは、うつろな気分でそのまま道を歩きつづける。
「…くぉらっ！？ 人が挨拶してんのに、無視すんのぉっ！！？？
朝から寝ぼけてんのっ！！？？」
真帆子が吠える。あたしはそれに答える気持ちも起きず、そのまま歩きつづける。
「ボケボケして、あんたちゃんと夜寝てるのっ！？
パソコンだかインターネットだかど〜せやりすぎてんでしょ！？」
真帆子はあたしの側を歩きつづけながら、がなり続ける。
「おっはよ〜♪」
向こうからきこえてくるあの声…。あたしの胸の鼓動が少し速くなる…。
（みんく…）
あたしはその声の主に話しかけようとする。
「真帆子ちゃん、叶花ちゃん、おっはよ〜♪」
何気無しに言うみんく。
（………）
あたしの気持ちが、急にガクンと沈む。
（…なぜ…？ なぜなの…？？？）
あたしはそのまま、みんくの脇を素通りして通学路を向かう…。
「…叶花ちゃん？ 叶花ちゃんってば！！」
みんくがあたしに話しかける。でも、あたしにはその声がただただ虚しく耳元で響くのみ…。
「叶花ってば、寝ぼけてんのよ。さっきもあたしが話しかけているのに、気がついてないみたい」
みんくと真帆子の会話が続く。
（…なぜ…？）
あたしの胸がズキンと痛む。
（…なぜなの…？）
あたしは急につらくなって、駆け出す。
「叶花？」
「叶花ちゃん？？？」
みんくと真帆子が叫ぶ。あたしは逃げるように学校への道を駆けていく。
（…なぜあたしの方が後なの…）
あたしの気持ちがますます暗く落ち込む。
（…なぜなの、みんく？ なぜ「真帆子ちゃん、叶花ちゃん、おっはよ〜♪」なの？）
あたしは頭を抱える。
（…なぜ真帆子の名前を先に呼んだの？？？？
なぜ「叶花ちゃん、真帆子ちゃん」…じゃないの…？？？）
昼休み、あたしは１人、屋上にたたずむ。
「叶花ちゃん、大丈夫？」
みんくが心配してあたしのもとまでやってきた。
（……）
あたしの鼓動が急に早くなる。
でも、あたしの脳裏には、さっきのみんくの言葉がついて離れない…。
（…なぜなの、みんく？ なぜ「真帆子ちゃん、叶花ちゃん、おっはよ〜♪」なの？）
…だめっ…！！！ このままじゃ涙が…！！！
あたしは、みんくから顔をそむける。
「寝不足なの？ 疲れているの？」
みんくはあたしの顔を覗きこむ。みんくの顔を見ると、急にあたしは顔中が熱くなった。
「いやっ…！」
あたしはみんくの顔を正視できず、顔を背ける。
「どうしたの？ 夕べ花火大会が終ってから、叶花ちゃんなんだか変だよ？」
…花火大会…そう。真帆子、いや、Ｍａｃｏが鏡の陰謀で拉致されたあの晩…。
ＭｉｎｋはＭａｃｏをすごく心配していた…。
「Ｍａｃｏちゃん、一体どこに…？」
柚実ちゃんをとりなしながらも、Ｍｉｎｋの目はＭａｃｏを探していた。
その時のＭｉｎｋの目には、あたしの、Ｃａｎｏｎの姿は全く映っていなかった…。
「…真帆子が大事なんでしょ…？」
あたしはつぶやいた。
「え？」
みんくは、きょとんとしてあたしを見る。…いやっ！
見ないで…！！！
「Ｍａｃｏが…真帆子が戻って来たときに、あんなに喜んでいたくせに…」
そうつぶやくと、あたしはみんくのもとから逃げ出した。
「叶花ちゃん！！？？」
みんくの叫びがあたしを追う…。あたしはたまらなくなって、学校を駆け出す。
（…あたし…いやな子だ…）
あたしの脳裏には、あの晩のＭｉｎｋとＭａｃｏの姿が浮かぶ。
−よかったよかったよかったぞ〜♪ よかったよかったよかったよ〜♪
よかったよかったよかったね〜♪−
じゃれあってヘンテコな踊りを踊るＭｉｎｋとＭａｃｏ…。
あんなに楽しそうに２人でじゃれあって…。
あんなヘンな踊りでじゃれあうなんて、
そんなのやってらんないじゃない…
あたしは、
そんな２人になんか混ざらないもん…
あたしは、そんな２人には･･････
………まざれない………
一体どのくらいさまよっていたのだろうか？
気がつくと、隣町まであたしは来ていた。
「あ、もうこんな時間…」
時計は午後４時１７分…。夕方になっていた。
「…いけない…。今日は４時から収録だった…」
どうせもう間に合わない…。Ｃａｎｏｎがいなくたって、ＭｉｎｋとＭａｃｏで収録なんてどうにでもなる…。あたしなんか、どうせいなくたって…
「み〜〜〜つけたっ♪」
後ろから突然、あたしに何かが抱き付いてきた。その声はみんく…？？？
「探したんだからねえっ☆」
みんくは、涙声であたしの背中に擦り寄る。
「ちょ、ちょっと、みんくってば…」
みんくに不意に抱きつかれて、あたしは思いっきり恥ずかしくなって赤面した。
「あんた一体どういうつもりっ！！！？？？」
がなる声。それは真帆子だった。
「心配したんだよ…探したんだよ…授業にも出てこないし…」
みんくがすすり泣く。
「ちょっとちょっと、泣かないでよ…」
あたしは戸惑ってしまった。
「あんたが心配させるからでしょ〜〜〜がっ！！！」
さらにがなる真帆子。
「そうだよぅ〜〜〜〜。真帆子ちゃんだって、本気で心配したんだからねえっ！！」
みんくが涙声で抗議するように言う。
「…真帆子…？ あんたが…？？？」
「あたりまえでしょう〜がっ！！！ あたしが友達心配しないような冷たいやつだと思ってんのっ！！？？？」
………友達………？
真帆子が、あたしのこと、友達ですって…？？？
「真帆子…ご…」
言葉がうまく出てこない…本当は「ごめんなさい」って言いたいのに…
周囲はいつの間にか暗くなってきていた。
「あ、そういえば今日は収録あったんだっけ。」
みんくが思い出したように言う。
「ご、ごめん…あたしのせいで…鳥海先輩待ってただろうにね…」
みんくがせっかく鳥海先輩に会える貴重な時間だったのに…あたしのせいで…。
「でも、叶花ちゃんの方が大事だよっ☆」
みんくはウィンクしながら言う。
「そうだよ。モッくんよりも、やっぱりあたしも叶花が大事だよ。」
「そうだよね。先輩かわいそうだけど、でも、叶花ちゃんだって大事だもん。みつかってよかったあ♪」
みんくはそう言うと、あたしの手をとって、踊り始めた。
「よかったよかったよかったぞ〜♪ よかったよかったよかったよ〜♪
よかったよかったよかったね〜♪」
戸惑うあたし。いつの間にか真帆子も加わって、あたしとみんくの手をとって踊り始めた。
「ちょ、ちょっとちょっとぉ〜〜〜」
あたしはただただ戸惑うばかり。２人はおかまいなしに、あたしをも巻き込みながら、踊り続ける。
「よかったよかったよかったね〜〜〜〜♪」
…どうしてかな…
本当は踊りたいのに…本当は混ざりたかったのに…
せっかく混ざれたのに…
でも、あたしは踊れない…
あたしはまだまだ混ざれない…
真帆子に「ごめんなさい」の一言も言えなくて…
素直な
真実の自分でいたいのに…
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夏コミでは同人誌を出したのですが、ネットでは８ヶ月もご無沙汰しておりました。小説自体、半年ぶりの作品になってしまいました。だいぶ勘が鈍ってしまったので、ある種リバビリも兼ねて書きましたが、いかがでしょうか？
今回は久しぶりの叶花ちゃん小説です。かなり短めですが、しかし、例によって大問題作（ちゅど〜〜〜〜ん！！！）。相変わらずドロドロの心理描写ですね（滝汗）。もともとは「よかった音頭」を見て「まざりたい」のに混ざれない叶花ちゃんを見て、その叶花ちゃんの心情を取り上げてみたいと思ったのですが、結果こんな大問題作品に…（那智滝汗）。最後の方は少し明るめになりましたが、やはりセンチメンタルに終わってますね…。私のイメージする叶花ちゃんって、かなり乙女チックになってしまってるのがなんだかなあ…（苦笑）
久々に小説書くと、結構勝手が違って、短くても困難でした。でも、めげずにペースを上げていければと思ってます。
そういえば、碧乃風さんのリクエストで「有香ちゃん小説希望」とありましたので、近いうちに執筆したいと思っています。もうしばらくお待ちくださいね☆