「コンプレックス☆クリスマス」について（仮）
このページでは、立川先生の最新作である「コンプレックス☆クリスマス」について取り扱っていきます♪ タイトルは今のところ仮題です。
【作品概説】
※注：この文章は今年の冬コミ新刊にも掲載した文章です☆
もともとＨＰアップを考えて作った文章でしたが、コミケで速報をすべく、急遽コミケ向けに書き直したものです。
サイト開設３周年を迎えたのを機に、Ｗｅｂ上でも公開いたします♪ ご了承ください☆
１２月１７日発売の「なかよし冬やすみランド」に、立川先生の久々の新作となる「コンプレックス☆クリスマス」が掲載されました♪ 物語の舞台は、クリスマスを意識してか、「サンタクロースが実在する世界」のお話です。
本作のテーマは、トラウマ（心の傷）を抱えた少女がそれを乗り越える成長物語…という点です。「電脳少女☆Mink」では、自分の本当の姿に自信の無い少女・みんくちゃんの自尊心の問題が、内在するテーマとして扱われました。それに対し本作はもっとダイレクトに、現代の若者に多い対人恐怖の問題およびトラウマの問題に真っ正面から取り組んでいます。「Mink」で試みた「現代少女の心の問題への提言」に引き続いているテーマです。
かつてサンタの試験でドロボーに間違われて追い掛け回されるという怖い思いをし、それがトラウマとなって対人恐怖症になった倉本雪衣（くらもと ゆい）ちゃん。雪衣ちゃんは、下を向いて顔もあげぬままに生きていました。雪衣ちゃんの社会性は失われ、それが学校で発言できなかったり、花屋の店番もまともにこなせないという、雪衣ちゃんの社会的損失に繋がります。人が何を考えているかわからない、人が怖い…という雪衣ちゃんですが、実は、人と向き合えないからこそ人のことがわからない…という悪循環でもあったのです。
人のことを知るためには、人と向き合うしか手段は無いのです。顔をあげればみえてくるいいことも、下をむいたままでは見えなくなる…。クラスメートの新居冬也（あらい とうや）くんは、雪衣ちゃんに顔をあげて向き合うことの大切さを教えていきます。また冬也くんは、いつまでも人と向き合えない雪衣ちゃんに対して「わからなくてこわいのはお前のほう」と叱責します。実は、雪衣ちゃんの社会的損失は、人前で何もできないという直接的な損失の他に、人と向き合わないことによって他者から理解されず時には怖がられることさえある…という間接的な損失の両面があったのです。
もちろん、人と向き合うことで、辛いものごともたくさんみえてしまいます。雪衣ちゃんのトラウマは対人関係一般に般化し、辛い面をとにかく避けることに精一杯でした。しかし、冬也くんの言う通り、向き合わなければ良い面、楽しい面は決して見えてきません。人が社会の中で生活していくということは、良いことも辛いことも見えてしまうというジレンマの中にいながらもすべてを受容して生きていく…ということなのです。しかし、雪衣ちゃんのように一旦社会に対して恐怖をおぼえると、社会の良い面に向き合えずに気づくことができませんし、良い面に気づけないからこそまた社会が怖くなる…という悪循環に陥ります。あるできごとがきっかけで、雪衣ちゃんは物語の中でどうにか自力で人と向き合おうとしていきます。それは次第に惹かれていった冬也くんの存在が大きいゆえなのですが、その点は、少女漫画の王道たる立川ちっくなラブストーリでもあるのです。
「Mink」「コン☆クリ」…と、心の問題に提言を投げかけ続ける立川先生の姿勢は、今後も現代少女の健やかな心の成長を願うテーマを、更に扱ってくださると期待させられます。